こんにちは。Yellow Monkey Brewing(YMB)代表の駒田です。
少し時間が経ってしまいましたが、2026年8月、ニュージーランド・ウェリントンで開催された「BEERVANA 2026」への出展を終え、日本に戻ってきました。
結果から先に書けば、僕たちが日本から持ち込んだビールは、すべて完売しました。
しかも、とても大きな反響とともに。
ただ、そこだけを書くと、なんだかずいぶん簡単な話に見えてしまいます。
実際には、ニュージーランドへたどり着くまでの間に、本当に様々なことがありました。
BEERVANAへの出展が正式に決まったのは、開催までそれほど時間がないタイミングでした。
YMBにとって、初めての海外出展です。
そもそも、どこから何を準備すればいいのかがわかりません。
ビールをどうやって送るのか。
現地ではどんな設備を使うのか。
どんなブースをつくるのか。
どうやってYMBを紹介するのか。
一つひとつ、ほぼゼロから考えていきました。
BEERVANAのポータルサイトには、ブルワリーの紹介文から6種類のビールの説明まで、すべて英語で登録しました。
ブースも、「Japanese Style Beerとは何なのか」「横浜から来たブルワリーであることをどう表現するか」を考えながら、デザインを一からつくりました。
主催者のRyanとは日々連絡を取り、細かな確認を重ねました。
そして、もっとも驚いたのが物流でした。
開催までの時間が限られていたため、ビールは空輸することになりました。
その送料が、まさかの100万円超。
YMBのような小さなブルワリーにとって、笑って済ませられる金額ではありません。
「これ、本当に出展できるのかな」
そんなことを考えたこともありました。諦めることも頭をよぎりました。Ryanに「何か方法はないだろうか」と相談しました。
そんな中、航空券を買い、宿を押さえ、ビールを送り、ブースをつくる。一つ終われば、また次。
文字通り、毎日コツコツと準備を進めました。
だから成田空港に着いて、いよいよニュージーランドへ出発するというとき。普通なら一番ワクワクしている瞬間なのかもしれません。でも僕は、すでに疲れ果てていました。
そして正直に言えば、不安でした。そうして、ニュージーランドに向けて旅立ったのです。

ウェリントンに到着すると、ケンゴはとても嬉しそうでした。
彼にとってウェリントンは、かつてビールづくりを学んだ場所です。
学生時代に世界一周を経験している文ちゃんも、再びニュージーランドにやってきた高揚感を楽しんでいるように見えました。

二人を見ながら、「いいなあ、まぶしいな」と思っていました。
一方の僕は、頭のどこかでずっと考えていました。
「絶対に、ここで結果を出さなければ」
小さな会社にとって、今回の挑戦にかかった費用は決して小さくありません。
資金繰りのことも考えました。
これだけのお金と時間を使って、もし誰にも興味を持ってもらえなかったら。
もしビールが全然売れなかったら。
大げさではなく、僕個人としては「社運をかけている」というくらいの気持ちでした。
会場に入り、様子を確認します。幸い、ビールは全て会場に到着していました。

ところが、主催者から借りたビアサーバーがかなり汚れている。
これは、ケンゴと文ちゃんが一生懸命掃除をしてくれて、なんとかイベント開始に間に合わせました。
そして、いよいよ入場開始。
その瞬間から、想像していなかったことが起きました。
YMBのブースの前に、どんどん人が集まり始めたのです。
僕たち自身がそう感じただけではありません。現地のブルワリーの人たちや一般のお客さんからも、
「Yellow Monkeyのところが一番並んでいる」
と何度も言われました。

ケンゴと文ちゃんがビールを注ぐ。僕はその横で、ひたすら英語で説明する。
「Japanese Style Beerって何?」
「Japanese Umami Lagerってどういう意味?」
「Sake Yeast IPAって、日本酒みたいな味なの?」
「しいたけ?昆布?鰹節? 本当にビールに入っているの?」
「Umamiって、どんな味?」
「Japanese Green Tea Beerは抹茶なの?」
質問が次々に飛んできます。
でも後ろには長い行列ができている。一人のお客さんと、あまり長く話すことはできません。
だから、出発前につくっておいた想定問答がものすごく役に立ちました。
ワンフレーズ。長くてもツーフレーズ。できる限りシンプルな英語で答える。でも、流れ作業にはしない。
一人ひとりの目を見て、
「来てくれてありがとう」
と伝える。
そんな接客を続けました。これは、自分にしかできないことだと信じて。
事前にニュージーランド現地のPR会社と連携して行ったPR活動も、思っていた以上に効いていました。
現地の新聞にもYMBを取り上げていただき、その記事を読んで会場まで来てくれた人もいたからです。

「Are you Yellow Monkey?」
「君たちが、あの Yellow Monkeyか!」
そう声をかけられるたびに、嬉しかった。なかでも、忘れられない言葉があります。
「ニュージーランドによく戻ってきてくれたね!」
ニュージーランドからビールづくりを学び、ホップを使い、影響を受けてきた僕たちにとって、これ以上ない言葉でした。
僕も心の底から、「僕たちをニュージーランドに迎えてくれてありがとう」と伝えました。
BEERVANAは、2日間で4つのセッションに分かれていました。
1セッション約5時間。つまり、延べ約20時間。それに備えてビールを持っていきました。
ところが、実際にはその半分にも満たない時間で、僕たちのビールはすべてなくなりました。
2日目になると、
「Yellow Monkeyはすぐ売り切れるって聞いたから、最初に来た」
という人まで現れました。
全種類を制覇してくれる人。
同じビールを何度も飲みに戻ってくる人。
「ニュージーランドのどこで買えるんだ?」
と聞いてくれる人。僕たちの想像をはるかに超える反応でした。
「日本のビールだから珍しい」というだけでは、あそこまで何度も戻ってきてはくれないと思います。
ちゃんと、美味しいと思ってくれた。ちゃんと、面白いと思ってくれた。僕たちが模索しているJapanese Style Beerという考え方そのものに興味を持ってくれた。
そのことが、何より嬉しかった。そして、心の底から、ほっとしました。

YMBには、ニュージーランドという大切なバックボーンがあります。
ケンゴがウェリントンで学んだ醸造技術。ニュージーランド産ホップの素晴らしさ。現地のビール文化から受けた影響。
それらを日本へ持ち帰った。
そして、日本でビールをつくりながら、僕たちは改めて自分たちの国の文化を見つめるようになりました。
清酒酵母。麹。米糠。
昆布。鰹節。椎茸。
日本茶。
日本には、ものすごく豊かな発酵文化と食文化がある。
だったら、ニュージーランドで学んだものと、日本に昔からあるものを掛け合わせたらどうなるんだろう。そこから僕たちの「Japanese Style Beer」への挑戦が始まりました。
前回の記事にも書いたように、YMBが目指しているのは、日本の素材を奇抜な副原料として入れることではありません。
クリーンで、旨味があり、もう一杯飲みたくなるような余韻を残す。
日本料理のように、派手さだけではなく、繊細さや奥行きを楽しめるビールをつくりたい。
そして、そのビールをもう一度ニュージーランドへ持っていった。
考えてみれば、不思議な旅です。
ニュージーランドから日本へ。日本からニュージーランドへ。
技術も、人も、文化も行ったり来たりする。
それらが大きな円を描いて、一周して戻ってきたような感覚がありました。
これはきっと、ケンゴが一番強く感じていたことだと思います。
でも、彼のニュージーランドでの物語をずっと聞いてきた僕にとっても、とても感動的な「ホームカミング」でした。
今回のBEERVANAを経験して、改めて思ったことがあります。
僕たちはJapanese Style Beerを追求していきたい。それは間違いありません。
でも同時に、ニュージーランドへの敬意はずっと持っている。
Japanese StyleとNew Zealand Style。
その二つは、どちらかを選ぶものではなく、YMBを形づくる二本の柱なんだと思います。
ニュージーランドで学んだものがあったから、日本にあるものの価値にも気づくことができた。
日本を見つめ直したからこそ、今度はニュージーランドへの感謝も以前より深くなった。
BEERVANA 2026は、単なる海外イベントへの出展ではありませんでした。
僕たちがどこから来て、これからどこへ向かうのか。
それを確かめる旅だったように思います。
成田空港から出発したとき、僕は疲れ切っていました。
「本当に大丈夫なのかな」
という不安もありました。
でも、その不安を抱えたままでも、行ってよかった。
あのとき背中を押してくれたのは、いつもYMBを飲んでくれている人たちでした。
タップルームに来てくれる人。遠くから応援してくれる人。SNSで声をかけてくれる人。取引先の皆さん。
そして、YMBに関わってくれているすべての人。
僕たちだけでニュージーランドへ行ったわけではありません。
たくさんの人たちの応援を背負って、ビールを持っていきました。
だからこそ、完売したときに感じたのは「やった!」という興奮以上に、
「よかった」
という安堵だったのだと思います。ほんの少し、報われたような気がしました。
そして今、また横浜に戻り、ビールを届ける仕事をしています。
ニュージーランドで得た自信も、感謝も、課題も全部持ち帰ってきました。
Japanese Style Beerは、まだ完成していません。
むしろ、これからです。
ニュージーランドであれだけ楽しんでもらえたのなら、もっと先へ行ける。
横浜から、日本へ。
日本から、世界へ。
そしていつか、またニュージーランドへ。
大きな円を何度でも描きながら。
YMBという小さな船は、次の航海へ向かいます。
Thank you, New Zealand.
Be pirates. Be playful.

Yellow Monkey Brewing
Founder & CEO 駒田 博紀